■脳卒中:夏場が危険
発汗で血液濃縮、詰まりやすく「脳梗塞に」
日本人の死亡原因3位の脳卒中は、冬に発症するイメージを持つ人が多いが、脳卒中のうち3分の2を占める脳梗塞(こうそく)は夏場が最も危険だ。後遺症で寝たきりになる原因の1位でもある脳卒中の予防・再発防止には、食事や運動など適切な生活習慣がポイントになる。【遠藤哲也】
◆完治2割以下、生活習慣正し予防を
「がんほどには恐れられていないが、脳卒中になると、半身まひなど大きな問題を抱えます。失語症になり、自分の体験を話せない患者が多いため、社会問題として大きく取り上げられてこなかった」。社団法人・日本脳卒中協会理事長で、国立循環器病センター名誉総長の山口武典医師は指摘する。
脳卒中は(1)脳梗塞(2)脳出血(3)くも膜下出血などの総称。脳の血管が詰まったり、破れて、脳にさまざまな症状が出る病気だ。発症率は1000人に1、2人。患者数は約150万人で、年間死亡数は約13万人に達する。
(1)脳梗塞は脳の血管が詰まる場合で▽細い動脈が詰まる「ラクナ」▽太い血管が詰まる「アテローム血栓性」▽心臓からの血栓が詰まる「心原性」がある。
(2)脳出血は、高血圧が主因になり、脳の血管が破れて出血する。
(3)くも膜下出血は、脳を覆う「くも膜」と「脳軟膜」の間の太い動脈にできた動脈瘤(りゅう)が破れて起きる。
山口医師によると、1960年代は脳卒中死亡のうち約3分の2が脳出血だった。しかし、現在では脳出血は約4分の1に減り、代わって脳梗塞が約6割に上っている。「昔の食事は塩分が多かったため高血圧を引き起こし、脳出血になっていた。今は肉食が増え、体を動かす機会が減るなどして、動脈硬化が進み、脳梗塞に結びつきやすい」と山口医師。
夏に脳梗塞が多いのは、汗をかき、脱水状態になると、血液が濃縮され血管が詰まりやすくなるからだ。この季節は十分な水分を取ることが大切になる。
「脳梗塞の死亡率は7%と比較的低いですが、完全に良くなるのは2割以下。予防が最も大切です」と山口医師。
◇男性に危険潜む
脳卒中は、生活習慣病の一つでもある。食べ過ぎ▽喫煙▽多量飲酒▽運動不足▽ストレス−−など悪い生活習慣を正し、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満の「死の四重奏」を防ぐことが何より重要になる=イラスト参照。
男性が女性より脳卒中になる割合が高いのは「ホルモンの影響もあるが、たばこや飲酒、外食など男性の方が体に良くない生活を続けているからではないか」と話す。
◇症状出たら即病院へ
日本脳卒中協会は「脳卒中の予防10カ条」=別表=を定めており、参考にしたい。同協会専務理事の中山博文医師は「100%の予防はできないので、初期症状を見逃さず、日ごろから発症時の対応を考えてほしい」とアドバイスする。
脳卒中の初期症状には、顔や手足の片側のまひ▽言葉が出ない、ろれつが回らない▽めまい▽片目が見えない▽原因不明の激しい頭痛−−がある。3時間以内なら詰まった血管を開通させる「血栓溶解療法」の効果が高いとされ、中山医師は「初期症状が出たら、できるだけ早く専門の病院に行ってほしい」と話す。
◇不整脈が誘発も
糖尿病や不整脈が脳卒中を引き起こす病気だと認識している人は半数にも満たないことが、製薬会社「ファイザー」のアンケートで分かった。40代以上の男女計600人を対象に今年3月、インターネットで調べた。
脳卒中になりやすい病気を選ぶ質問で、高血圧、高コレステロール血症は8割以上が選び、糖尿病は41%、不整脈は33%、心臓病は25%にとどまった。いずれも脳卒中を引き起こす危険性がある。
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【脳卒中の予防10カ条】
1)手始めに 高血圧から 治しましょう
2)糖尿病 放っておいたら 悔い残る
3)不整脈 見つかり次第 すぐ受診
4)予防には タバコを止(や)める 意志を持て
5)アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
6)高すぎる コレステロールも 見逃すな
7)お食事の 塩分・脂肪 控えめに
8)体力に 合った運動 続けよう
9)万病の 引き金になる 太りすぎ
10)脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
※日本脳卒中協会作成
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